ミノフスキー物理学(ミノフスキーぶつりがく、Minovsky Physics)は、アニメ「ガンダムシリーズ」のうち、宇宙世紀及び未来世紀、正暦の世界観をもつ作品に登場する、架空の学問。架空の素粒子であるミノフスキー粒子の存在を前提としており、「ガンダムシリーズ」内の多くの技術はこの学問によって成り立っている。
ミノフスキー物理学の設定自体はそのほとんどがアニメ『機動戦士ガンダム』への後付け設定としてみのり書房発行の雑誌「月刊OUT」別冊『宇宙翔ける戦士達 ガンダムセンチュリー』に登場し、後に公式設定となったものである。
『機動戦士ガンダム』のSF設定を行った松崎健一によると、「ミノフスキー」という名称はガンダムシリーズ総監督の富野由悠季の名前をもじって、「富野さんが好きな粒子」→「トミノスキー」→「ミノフスキー」と名づけたという
ミノフスキー物理学仮説は、ロシア系スペースノイドであるジオン公国在住の物理学者トレノフ・Y・ミノフスキー(T・Y・ミノフスキー、Y・T・ミノフスキーと表記される事もある)博士が提唱した学説である。ミノフスキー粒子という素粒子の存在を仮定し、自然界の4つの力(重力、電磁力、強い力、弱い力)の統一場理論に決着をつけようとした仮説だった。
宇宙世紀0069年に博士自身がミノフスキー粒子を発見したことで証明され、以後、素粒子物理学の根幹となり、また宇宙世紀の技術には欠かせないものとなった。この物理学に与えた影響、あるいは軍事技術に与えた影響をミノフスキーショック(Minovsky Shock)と呼び、宇宙世紀最大の事件として大きな影を残すこととなった。
なお、ミノフスキー博士のミドルネーム "Y" はしばしば「イヨネスコのイニシャル」と誤解されるが、イヨネスコはミノフスキーの共同研究者であり別人の姓である。
歴史
トレノフ・Y・ミノフスキー博士によって発表された、後にミノフスキー物理学へと発展する仮説は、従来の物理学の全てを覆す新説で、当時の学会には到底容認できるものではなかった。発表当時、そもそもその前提となるミノフスキー粒子は発見されておらず、「宇宙世紀に復活したエーテル理論だ」と揶揄され、ミノフスキー博士は学会を追放された。
ミノフスキー博士は、当時からサイド3の住人だったとする説と、サイド4に居を構えていたとする説がある。どちらにしろ、この仮説に目をつけたデギン・ソド・ザビの手引きによって研究の場はサイド3となった。宇宙世紀0045年にミノフスキー物理学会(ミノフスキーぶつりがっかい、Minovsky Physical Society)を立ち上げた。宇宙世紀0047年にはミノフスキー物理学会を発展解消して、共同研究者のイヨネスコ博士と共にM&Y社(エムアンドワイしゃ、M&Y Company)を設立。ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉の研究・開発を行い、ミノフスキー粒子の発見と熱核反応炉の実用化に努めた。なお、ミノフスキー物理学会は発展解消以降も存続していたようである。
宇宙世紀0065年、ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉の実験中、熱核融合炉内にて特殊な電磁波効果を発見。追試をおこなったがこれは非公開とされた。宇宙世紀0069年にはついにミノフスキー粒子の存在に関する公開確証実験に成功し、ミノフスキー物理学が証明された。宇宙世紀0070年3月には宇宙空間でのミノフスキー粒子散布下における電磁波妨害をはじめとする、「ミノフスキー効果」と呼ばれるさまざまな特殊効果の公開確証実験に成功し、宇宙世紀0070年5月にはメガ粒子砲までをも完成させた。しかし、この頃になるとミノフスキー博士は軍国主義の旗色濃いジオンにおいて、戦争へ利用されることを恐れ、宇宙世紀0072年に地球連邦政府へ亡命。これらの技術は連邦側へも伝わることとなる。
宇宙世紀0071年、ジオン公国軍は2年間をかけてミノフスキー粒子散布下における新型兵器を開発するよう各企業に命令を出し、宇宙世紀0073年、ジオニック社の新型兵器・モビルスーツ1号機クラブマンが完成した。翌宇宙世紀0074には初の制式量産モビルスーツ・ザクIが完成し、宇宙世紀0079年の一年戦争を迎えることになる。一方、地球連邦軍ではミノフスキー博士を中心にエネルギーCAPの開発を行い、ジオン公国に先んじてビームライフル及びビームサーベルを完成させた。
一年戦争勃発後、ミノフスキー博士は軍事研究から退き、光子とミノフスキー粒子との統一の研究に没頭したといわれるが、詳細は不明である。そもそも、ミノフスキー博士は宇宙世紀0072年の亡命に失敗して死亡したとする説もあり、詳しい経歴が語られていないのが現状である。
一年戦争後もミノフスキー物理学の研究は進められ、宇宙世紀の科学におけるもう一つの柱であるニュータイプの研究と相まって、さまざまな新型兵器が開発された。しかし、その発展も宇宙世紀の崩壊とともに幕を閉じることとなる。
正暦時代に伝えられる黒歴史によれば、未来世紀時代に復活してIフィールドビーム駆動など新たな技術が確立され再び全盛を迎えるが、第7世代ミノフスキー物理理論による対モビルスーツ無力化兵器を搭載したモビルアーマー・ウォドムの登場により再び姿を消すこととなった。しかし、∀ガンダムやスモーが開発された時代において、過去の技術がある程度取り戻されるとともに復活したとされている。
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設定の変遷
『機動戦士ガンダム』放送当初は、いわゆる「巨大ロボットプロレス」に科学的裏付けを与えるための、単にレーダーを妨害する粒子というチャフのようなイメージでミノフスキー粒子が設定されたのみだった。設定の広がるきっかけとなったのは、ホワイトベースの大気圏突入後の飛行能力である。とても揚力や推進力で飛行できるような形態ではないホワイトベースが、重力下で飛行するための設定が、その段階では考案されていなかった。当時、設定担当で脚本家でもあったスタジオぬえの松崎健一はこの第5話の展開について聞かされておらず、「なんてことしてくれたのよ」と監督に電話で文句を言ったという。しかし既に放映されてしまっていたため、後付けで考案されたのがミノフスキークラフトによる重力制御飛行である。そこからミノフスキー物理学の設定が膨らんでいき、『ガンダムセンチュリー』で詳しく語られることとなる。
Iフィールドについては、当初からこの名前で語られていたものではなく、元々は対ビームバリアーや単にビームバリアー、ビーム偏向フィールドなどと呼ばれていた。実際にIフィールドという名前で語られるようになったのも『ガンダムセンチュリー』からで、作品中に名称が登場したのは1989年の模型誌の連載記事『ガンダム・センチネル』からである。また、元々は「磁力バリアー」という設定であり、ミノフスキー粒子によるバリアーという設定は一時期、完全に公式設定にはなっている訳ではなかったため、サイコガンダムなどについても「磁力バリアー」とする記述が多かった。そして1991年の『機動戦士ガンダム0083』でIフィールドによるビームバリアが描かれ、映像作品に使われたことにより公式の設定となった。
メガ粒子については、『機動戦士ガンダム』放送時は「重金属粒子」という設定であり、ビームサーベルも同じく重金属粒子を振動させたものという設定だった。『ガンダムセンチュリー』においてミノフスキー粒子を縮退したものという設定が作られたが、重金属粒子とする設定は小説『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』第1巻やアニメ『∀ガンダム』、小説『ガイア・ギア』などにも見られ、現在でも完全に死んだ設定という訳ではない。縮退については関連リンクの「メガ粒子砲 - ガンダム入門塾」も参照の事。
『機動武闘伝Gガンダム』をはじめとする未来世紀の世界観においては、世界観が異なるためミノフスキー粒子という名の物質は存在しないが、よく似た素粒子は発見されているといわれ、熱核反応炉やビームの制御に使われているとされていた。これは後に、『∀ガンダム』の黒歴史において、未来世紀には一時期ミノフスキー物理学の盛んな時代があったと補完されている。
また、『機動新世紀ガンダムX』のアフターウォーの世界観では、同じく世界観は異なり、ミノフスキー粒子は存在しないものの、「戦時に捲かれた妙なモノ」のためにレーダー等が使いづらいという台詞が、本編で僅かだがある。
ミノフスキー粒子
ミノフスキー粒子(ミノフスキーりゅうし、Minovsky Particle)は、『機動戦士ガンダム』より登場する、ミノフスキー物理学の根幹を成す素粒子の一種である。宇宙世紀0069年、ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉内にて発見された。
ミノフスキー粒子は性質として、静止質量がほとんどゼロで、極めて強力な帯電性質を有する。また、一定濃度において立体格子状に整列する性質を持っている。そのためミノフスキー粒子が散布された空間では、ミノフスキー粒子より大きい物質を通さない性質がある。これをミノフスキー効果と呼び、モビルスーツの誕生、はては一年戦争勃発の遠因となった。
サイコミュやミノフスキー通信などを介することで、これらのシステムの周囲のミノフスキー粒子はニュータイプの特殊な脳波である感応波(サイコウェーブ)と共鳴するような作用をしているともいえる。ただし、実質的には研究段階であり、詳しいことは分かっていない。一説によれば、第二次ネオ・ジオン抗争においてアクシズの落下を防いだのは、地球全体に漂うミノフスキー粒子がサイコフレームを通じることでアムロ・レイの感応波に共鳴し、巨大なIフィールドを発生させたためだといわれている。
ミノフスキー効果
ミノフスキー効果(ミノフスキーこうか、Minovsky Effect)は、ミノフスキー粒子の主要な性質の総称である。宇宙世紀0065年、ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉の実験中にこの電磁波障害効果が発見され、後のミノフスキー粒子の発見につながった。
ミノフスキー粒子が散布された空間では電波(マイクロ波?超長波)、一部の可視光線、赤外線は伝わることができない。このため、従来の電波による交信や、レーダー、センサーの多くが使用不能となり、長距離誘導をなされるミサイルの誘導が不可能となってしまい、有視界下における戦闘を余儀なくされることとなる。なお一説には「一部の可視光線」とは赤を指し、シャア・アズナブルのパーソナルカラーが赤だったのもこのことからとも言われる。
「従来の電波による交信ができなくなる」という割にはガンダムシリーズの劇中で接触回線を使わずとも普通に通信しているシーンが多く見受けられるが、これは#設定の変遷で先に述べたとおり、スタッフが当初ミノフスキー粒子をチャフのようなイメージとして捉えられていたからである。もっともミノフスキー効果はその濃度によって変わってくるため、レーダーは阻害されるが無線通信は可能、というケースも充分考えられる。林譲治によるゲーム作品のノベライズ版ではレーザー通信がしばしば登場する。
モビルスーツ搭載などの短距離誘導のミサイルはこれに該当しない。また、電子スチルカメラの撮影にも影響が出るため、この時代には一部の好事家のみが使用していたフィルムカメラが数世紀ぶりに活躍するようになった。ビデオの場合も同様で、VHSのようなアナログビデオテープが復活している。なおこれは放送当時、電子スチルカメラが無かったための後付け設定である。
また、一部の電子機器に対する障害も発見されたが、これはさほど深刻なものではなかったようである。一説によればミサイルなどが使用不可能になったのはこの影響とされる。一年戦争時には念のために有線の通信装置を使用したり、前時代的な通信ソケットが使われたりもした。
Iフィールド
Iフィールド(アイフィールド、I-Field)は、『機動戦士ガンダム』への後付け設定として『ガンダムセンチュリー』より登場する、ミノフスキー粒子の性質の一種。
ミノフスキー粒子は正負に荷電する一方、粒子間にΤフォース(タウフォース, Τ-Force)と呼ばれる斥力を生じ、一定濃度において立体格子状に整列する性質を持っており、これによって生じた場をIフィールドと呼ぶ。また、この斥力による効果をミノフスキーエフェクト(Minovsky Effect)と呼ぶ。
Iフィールドはミノフスキー粒子に作用し、更に圧縮することによって生じる縮退によってメガ粒子を生じさせる。また、Iフィールドはミノフスキー粒子と同様、メガ粒子にも作用する。
Iフィールドを応用した技術は枚挙にいとまがない。モビルスーツに搭載されているミノフスキー・イヨネスコ型核融合炉はIフィールドによって小型化の実現が可能となった。また、メガ粒子砲やビームライフルはIフィールドによって生じたメガ粒子を偏向し、発射するものである。ビームサーベルは縮退寸前の高エネルギー状態のミノフスキー粒子をIフィールドによって収束させ、ビーム状の刀身を形成させるものである。ミノフスキー干渉波(ミノフスキーかんしょうは、Minovsky Interference Wave)による索敵は、Iフィールド内に導電性物質が存在するとき、これが乱れることを応用した技術である。
また、ミノフスキークラフト、ミノフスキードライブはいずれもIフィールドを応用したシステムであり、駆動システムであるIフィールドビーム駆動はこれらを発展させたものである。その他、フィールドモーター駆動などIフィールドは宇宙世紀の技術開発に大きく貢献した。
メガ粒子
メガ粒子(Mega Particle)は、『機動戦士ガンダム』より登場する、ミノフスキー粒子の性質の一種。設定自体は『ガンダムセンチュリー』による後付けである。
正と負の電荷を帯びたミノフスキー粒子を強力なIフィールドで圧縮し、縮退、融合させる事で生成された粒子をメガ粒子と呼ぶ。その際に質量欠損が起こり、一部が運動エネルギーに変化する。これを一定まで蓄積させて打ち出す強力なビーム砲がメガ粒子砲である。